京つう

アート/芸術  |洛中

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2008年08月12日

「ダムに沈む村」という詩集


「ダムに沈む村」
-私の生まれたダムに沈む村は美しい渓谷とひなびた小さな温泉場-



この詩集を出されたのは、吾妻郡長野原町川原湯温泉で生まれ育たれた豊田政子さん。
川原湯温泉で民宿「雷五郎」を営まれています。
私がおじゃましたときは、左手を痛められており、民宿には泊まれなかったのですが、ぜひお会いしたくて突然訪問。
入り口には、愛犬のゴンが暑かったので自宅で休憩。



そして、庭のベンチでお茶をご馳走になり、気さくに話をさせていただきました。



そして、いろんなお話をお聞きしました。
この村を変えることになってしまったダムは、八ッ場ダム(やんばダムと読みます)。
もう50年以上も前の昭和27年にダム建設の計画が発表されたそうです。
その話をおじい様から聞かされたのは、豊田さんが16歳の時。
それ以来、ダム騒動の苦悩を背負わされる一生となります。
自分の生まれ育った村や美しい渓谷、そして温泉がダムに沈んでしまう思いを詩に託されました。

すばらしい詩の数々。
そこには、ふるさとを思う気持ちが、ふるさとに咲く花のスケッチとともに綴られています。
そういえば、この村には、いろんな花が咲き乱れていました。










その詩の中に、「木造校舎(長野原町立第一小学校)」という詩がありました。
私は、その現場を次の日に訪ねました。
今は、八ツ場ダム調査事務所となっている場所が、その小学校のあった場所でした。



ここの坂を上って登校されたんですね。



ここで運動会をされたんでしょうね。



50年以上も前に計画され決定されたということで進められていくダム建設。
今、本当に必要なのか?
10年一昔といわれる中、今はそれ以上に短い周期で世の中はどんどん変わっています。
自然破壊を、人間の手で起こしてしまうダム建設。
自然が、何千年、吾妻渓谷の一部も水没し、そして何より、川原湯温泉全体を水没させるダム。
あらためて、本当に必要なのかという疑問を感じました。

吾妻渓谷のすばらしい白糸の滝も見ました。
この滝も、5年後には無くなります。

ダム建設自体が自然破壊を起こしているのではありません。
今は、まだダム自体はできていません。
動き出しているのは、人工湖を跨ぐ大きな橋の橋げたや山肌を大きく削っての人工湖の上にできる造成地の整備。
ダム建設のために、どれほど多くの自然が破壊されていることか!







人間はいつかは死ぬものとはわかっています。
しかし、自然は脈々と永続的なものだと思っていました。
でも、何万年という歳月の中で作り上げたすばらしい渓谷や滝や緑、そして人の生活を、人間の手によって、いとも簡単にそして無残にもなくしてしまうのです。
つくづく、人間の傲慢さを感じざるを得ませんでした。

夕方の5時になると、村全体にオルゴールが響き渡します。
そうすると、今まで唸りを上げていたブルドーザーなどの重機の音が消えて、アブラゼミとカジカの鳴き声が帰ってきました。

「ダムに沈む村」:豊田政子著
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Posted by Norichan at 17:00Comments(0)